旅のすみか

初春の寒い朝

少し肩の力を抜いて深呼吸をしてみよう。
激しかった冬も終わり、徐々に穏やかな暖かさを感じるいま頃。
澄んだ冷たい空気の中にいると、そうと望みさえすれば何にでもなれそうな気がする。
その反面、何にもなれないような不安もあったり。
ほんとうは、何にもなりたくないのかもしれない、なんて思ったり。




月日は 百代の過客にして
行きかふ年も また 旅人なり


船の上に 生涯を浮かべ
馬の口とらへて 老いを迎ふる者は
日々 旅にして 旅をすみかとす


古人も 多く 旅に死せるあり
子も いずれの年よりか
片雲の風に誘われて 漂泊の思ひやまず



松尾芭蕉奥の細道



この世に生まれ、この世を去るまで、生きていることの全部が、旅